日本学校教育相談学会

The Japanese Association of School Counseling and Guidance

2004.5.1


● 特別寄稿 P.1
● 第16回山梨大会のご案内(2号通信) P.2
● 支部活動報告<佐賀県支部> P.3
● 各委員会等の情報 P.4
● 学校カウンセラー認定審査を終えて P.5
● 教育相談トピックス/取材リポート P.6
● 第5回夏季ワークショップ案内 P.7
● 役立つ用語シリーズ/中央研修会予告/編集後記 P.8

特別寄稿 ニューヨーク州公認スクールサイコロジスト

バーンズ亀山静子  先生
 どんなことにもいろいろな見方があり、角度によっては全く違った結果 となってしまうことすらあります。教育相談でも、子どもから聞く話、保護者から聞く話、教師から聞く話のそれぞれが異なっていて、「羅生門」の映画のよう だなと思った体験は皆さんにもきっとあることでしょう。  子どもたちをめぐる状況も複雑です。子どもが悪い、親が悪い、教師が悪い、教育委員会が悪い、入試が悪い、塾が悪い、社会が悪い、テレビが悪い、イン ターネットが悪い、携帯電話が悪い…いくら挙げていっても、どれもはずれていてどれも当たっているといったところでしょうか。残念ながら昔のヒーロー漫画 のような悪者は見つからないものです。
 違う視点へのオープンな姿勢と、自分には見えていない部分があるだろうと認識しておくことは、どんなときも大切です。さらに、カウンセラーにはそれを踏 まえた上で、柔軟でバランスのよい判断力が要求されています。
 教育相談の中でもさまざまな視点が必要になってきています。文科省は本年1月末に、児童生徒の中に6%ほど存在すると見られる、LD、ADHDなどの軽 度の障害を持つ子どもへの対応のガイドラインを出しました。これらの子どもは往々にして「しつけの悪い子」という見られ方をしてきたため保護者もつらい思 いをしてきています。
このような軽度の障害の子どもたちはたいてい通常学級に在籍していますし、皆さんが教育相談の中で対応することが今までもこれからも多いことでしょう。特 別支援教育の専門でないにしても、カウンセラーがある程度の知識と発達の面からの視点を持つことはとても大切です。また、同時にLDやADHDという診断 名が免罪符的に使用されないように軌道修正を図るのもカウンセラーの役目でしょう。「ああ、ADHDだからね、しかたないね」ですむことなのかどうか、実 際の問題や他の人との支障はそれで解消されるのか、そのへんの見極めが必要になります。「ADHDだとそういう行動になりやすい」と理解したこと=翌日か らその問題行動が消える、という図式にはなりません。
 川崎市のある小学校では、学習に大きなつまずきのある子どもたちに週に数回の個別指導をしてたいへん成果を上げてきているそうです。大変興味深かったの は、個別指導を開始した時点では不登校の児童が全校で40名を超えていたのが、6年を経過した現在、不登校は1名しかおらず、その子も五月雨式ではあるが 登校をするようになってきているという報告でした。
「個別指導が不登校をなくす」と直接結論づけているわけではありません。ただ、そのような指導体制を組んでいる学校では、個々の子どもの様子やニーズに注 意が払われているでしょうし、背景としてそれを可能にする教職員体制や保護者の姿勢があること、つまりポジティブな学校全体の雰囲気―学校風土―の存在を 推しはかることができます。
 スクールカウンセリングが目指すものが、それぞれの児童生徒がハッピーな学校生活を送ること、そしてその中でより多くの成功体験をしていけるよう支援する ことであるとするなら、支援の方法はカウンセリング室で行う直接のカウンセリングに留まりません。
 ポジティブな学校風土は、子どもを学習面でも情緒面でも社会面でも育み、予防的なカウンセリングが効果的に行われる場でもあります。ですから、皆さんそれ ぞれにポジティブな学校風土作りの推進者になっていただくことが、スクールカウンセリングの充実を図ることにもなるわけです。  「人への思いやりを持った子どもを育成する」などと言葉でポリシーを決めるだけでは、学校風土を作り上げることはできません。そのポリシーをどう指導の 中で具現化するのか大小のアクションプランが作られ、さらにそのプランが実行される必要があります。今までのありかたの中で何が欠けていたのか、何を変え ていくべきなのかをいろいろな視点から考え、バランス感覚を失わずに、教職員や保護者ともうまく連携をしていくことがここでも要求されます。
 異なる意見へのオープンな姿勢、柔軟でバランスのよい判断力―カウンセラーに要求されている要素として挙げたこれらは、ふと気づけば、私たちが子どもた ちに期待していることでもあります。まずはわれわれスクールカウンセラーが自らの行動を通じて、子どもたちに、ほかの教職員に、保護者に模範を示していこ うではありませんか。